未経験からITコンサルタントをはじめて思うこと。

ITコンサルタントを2年あまりやってきた七味おやじです(記事執筆時点で進行形)。

本記事では、ITコンサルタントを「ITを活用して課題を解決したい顧客のお手伝いをする人」と定義します。あえて「ITを活用して」という一言を組み込みました。よく勘違いされがちですが、ITコンサルタントは企業の経営層が抱える問題を解決する戦略コンサルタントではないです。コンサルタントというコトバが戦略コンサルタントをイメージさせるので、ITコンサルタントにもそれを求める傾向があります。「戦略コンサルタントではない」と顧客に事前にお伝えする方が後々困らないでしょう。さて、今回は「ITコンサルタント」というキャリアについて必要と思うスキルや考え方を経験則に基づいて記事にしています。

目次

顧客と対話することが大事!

「対話することが大事」なのですが、これをできる人が本当に少ないです。その要因の一つはパワーポイントにあると思っています。パワーポイントの資料を読み上げて一方的に言いたいことを言ってプレゼンを終えてしまう。その瞬間に顧客も気づきます。このITコンサルタントは、提案のみで一方通行だと。そこから外れた話題にはついてこれないと。パワーポイントの資料作りを仕事と勘違いしている人を本当によく見かけます。

そもそも顧客は課題を言語化できる状態でしょうか?言語化できていたとしても、その抽象度は高いケースが多いです。従って、課題は何か?それは具体的にどういうことか?をお互いイメージできるように言語化することが大事になってきます。そのためには「対話」が必要です。「対話」のベースとなるものが提案資料であったり、顧客の既存資料であったりします。実はそのベースはどちらでもいいのです。パワーポイントであろうが、ワードであろうが、エクセルであろうが、アプリケーションの種類など本当にどうでもいい話です。大事なのは「対話」によってお互いのイメージを共有することです。

それでは、なぜ資料を読み上げるだけで終わってしまうのか?その要因の一つは、「沈黙の間」に対する恐怖心だと思います。「対話」の中で必ず「沈黙の間」は生まれます。話し手が述べたことに対して、聞き手が考える時間。それが「沈黙の間」ととらえた方が建設的です。この「沈黙の間」を恐れて、一方的に発言し続ける人が多いです。「対話」はコトバを並べ立てることではなく「課題」を言語化・具体化することですので、熟考する時間を省いてはいけません。「沈黙の間」ではなく「熟考の間」ととらえれば、意味のある対話になります。

「お手伝い」という意識が必要!

よく「コンサルタント」というコトバの説明文に「課題を解決する人」というフレーズを見かけます。いや、無理でしょう!と突っ込みたくなります。顧客の課題を外部の人間が本当に解決できますか?「課題を解決する人」は顧客自身であり、コンサルタントではないはずです。このような過剰表現を見かけたら内容を疑うべきです。顧客が何十年もかけて築き上げてきたビジネス・プロセスを外部の人間が数ヶ月で課題解決してしまう。そんなこと本当に起きますか?お題が「戦略」であれ「財務」であれ「IT」であれ「人事」であれ「マーケティング」であれ「SCM」であれ「CRM」であれ・・・。最終的に判断して手を動かすのは顧客自身です。よって、コンサルタントは「課題を解決する人」ではなく「課題解決のお手伝いをする人」なのです。

裏を返すと、顧客自身に課題を明確化してそれを解決したい!という強い意思がない限り、プロジェクトはうまくいかないはずです。大量のパワーポイントの報告資料のみ顧客の手元に残って何も状況が変わっていないコンサル案件もよく見かけます。

それでは、どうすれば顧客自身が課題を明確化してそれを解決したい!と思えるでしょうか?具体的かつ小さな課題を実際に解決できれば、別の課題も同様に解決できる!と思えるのではないでしょうか?つまり、小さな成功体験が必要だと思うのです。

その小さな課題解決に付帯する新たな問題も出てくるはずです。例えば、顧客のITスキル向上などもそうでしょう。ソリューションを導入したところで、それを扱える人が顧客内に存在しないと運用はできないでしょう。そうすると、コンサルタントは顧客のITスキル向上のために何をすべきか考えることになるでしょう。主体は顧客自身でコンサルタントはあくまでお手伝いに過ぎないのです。結局のところ、顧客自身で課題を解決していかなければならないのです。

分析というコトバを安売りしてはいけない!

「分析」というもっともらしいコトバがよく飛び交います。「分析」とはなんでしょう?物事をいくつかの要素に分けて、その要素を細かい点まではっきりさせているのでしょうか?はっきりさせるためには、何かと相対的に比較しないと良し悪しもわからないでしょう。分析とはデータをこねくりまわしてグラフを作ることでも、文字だらけのパワーポイントのスライドを作ることでもありません。

顧客との対話の中でわかってきた課題をいくつかの要素にわけて、どの課題ならば解決できそうか?その課題を解決するとビジネス上のインパクトが大きそうか?その課題の解決策を顧客自身で運用していけそうか?を協議して決めること。そう言っても過言ではないでしょう。PythonやRなどのプログラミング言語を扱って行うのは、データ分析です。ITコンサルティングで必要とされる分析とは異なるものです。

つまり、分析とは先述の顧客との対話なしではできません。データ分析から示唆を得られることもありますのでデータ分析には十分な価値があるのですが、お手伝いすべきことがデータ分析かどうかは吟味した方がいいでしょう。そもそもデータ分析するためのデータが蓄積されていなければ話になりません。データを蓄積するところからスタートするケースも多いはずです。

現在の業務に多大な時間がかかっていたり、手作業のためにミスが多いことも考えられるでしょう。その場合は、ビジネスのプロセスをITでどう簡略化すべきか?どんなデータがあれば業務上有益な情報が得られそうか?そのような基礎情報から吟味する必要があります。それも分析です!データ分析はデータ基盤の上に成り立つものです。この点をすっ飛ばしてデータサイエンスばかりを語ってもDXは進みません。

提案にプレゼンスキルなど必要ない!

プレゼンの内容だけで導入ソリューションを決めますか?ライセンス料であったり、扱いやすさであったり、巷に転がる情報の豊富さであったり、教育がしっかりしていたり、いろんな観点で選ぶはずです。ましてや、顧客自身が自分たちで運用していくわけですから、トライアルで触ってみたいと思うのは自然です。しかも、複数の候補の中から自分たちの業務にあったものを選択したいと思いますよね?この中で、プレゼンスキルなんてものは出てきません。むしろ、顧客が考えることを想像し、先回りして判断材料を準備する地頭の良さやフットワークの軽さの方が重要です。

スーツを着て、ネクタイをしめて、暗い会議室の中で上手にプレゼンできたら、即契約なんてことはドラマの世界でしか起こらないでしょう。日常的に対話ができていれば、顧客との意識も合ってくるはずですし、あうんの呼吸も芽生えてきます。どこでどう間違ったのか、顧客の意思決定者(多くは経営層)を目前に綺麗な日本語でプレゼンすることが重要視されすぎだと思います。それは単なる儀式で、それ以前の段取りで勝負は大方ついています(たまにちゃぶ台をひっくり返されることはあります。その場合は、顧客の意思決定者が提案内容を気に入らないのです。プレゼンスキルとの因果関係は低いと思います)。

必要なのはマネジメントではなくマイルストーン!

得体の知れないコトバの一つに「マネジメント」というものがあります。VUCA、ブーカ、ブカと予測不可能な時代と叫ばれるにもかかわらず一向に減らない「マネジメント」という幻想的なコトバ。

課題が何であるかわかっていない、どれから手をつけていいのかわからない、手をつけたら別の問題が見えてくる。そういう混沌とした状況の中で何をマネジメントするのでしょうか?仮に抽象度の高い線表を作ったとしてスケジュールに乗らない場合にどのようなバックアッププランがあるのでしょうか?人手を増やして赤字プロジェクトにするのでしょうか?「マネジメント」を連呼する人に具体的な解決策の手札を聞いてみたいものです。

一方で、手探りで出来たなりに進めるのも危険です。そこで、大事なのはマイルストーンです。次年度の予算取りのタイミングは顧客でも決まっているでしょう。年度末にはある程度の成果を出して、上に報告する必要があるでしょう。そういったマイルストーンを明確化し、そのタイミングでどのレベルの完成度を目指すか、顧客と対話することが大事です。期待値の管理とはそういうことだと思います。これをできる人も本当に少ないです。

もし、マネジメントできるほどすべてが明確化されているならば、そのプロジェクトは大当たりです。粛々と進めましょう。でも、大半のプロジェクトはマネジメントできないほどに混沌としているはずです。繰り返しになりますが、必要なのはマイルストーンであり、顧客との対話であり、期待値の管理です。

コンサルタントはサービス業!

〇〇コンサルタントはサービス業です。それは戦略コンサルタントでも同じです。顧客の要望に応えるべく、サービス提供する職種です。プレゼンスキル、ロジカルシンキング、ファシリテーション、デザインシンキング、クリティカルシンキング、プログラミング言語など様々なスキルは顧客にサービス提供するための手段に過ぎません。

一つ一つのコトバは格好良く聞こえるかも知れませんが、本質はサービス業であると肝に銘じ、顧客に喜んでもらえたらハードワークも苦にならないという強いメンタルが必要でしょう。あるいは、合理的な思考でハードワークにならないやり方を模索する必要があるでしょう(個人的には断然こちらがオススメ)。例えば、「マネジメント」という幻想にはあまり付き合わない。例えば、パワーポイントの資料作りで100点を目指さない。例えば、プログラミングスキルはPoCで利用し、構築は顧客が容易に利用できるGUIのソリューションを導入する。例えば、マイルストーンごとの達成具合を顧客と意識合わせし、瞬間最大風速を上げることがないようプロジェクトを平準化する。例えば、人手が足りない場合は、社内でアサインしてもらえるように上司とコミュニケーションを密にとっておく。などなど。

まとめ

はじめて間もないITコンサルタントというキャリアですが、やりがいのあるキャリアだと思います。工夫次第でおもしろくなりますし、工夫次第でワークライフバランスも取れるキャリアだと思います。旧態依然のやり方にとらわれず、自分の頭で考えることが大事です。この点においては他の職種とそう変わらないと思います。今後、日本もDXがどんどん進んで欲しいと思う七味おやじでした。

ビジネスパーソンが「頭の使い方」を学ぶための本について紹介した記事はこちら。

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