人事に5年間いて思った「人事というキャリアの長所と短所」。

5年ほど人事に従事していた七味おやじです。

今回は謎多きキャリア「人事」についての記事です。人事すべての業務を経験したわけではないですし、人事の隅々までわかっているわけでもありません。しかし、人事というキャリアを5年間経験しましたので、「人事というキャリアの長所と短所」という観点で本記事に記載します。

これから人事のキャリアを目指す方のご参考になれば幸いです。

目次

人事とは

機密性が高いだけに、人事経験のない人にとって謎めいていた職種です。

実は人事の役割は結構多岐にわたります。大雑把に分類すると具体的に以下のような役割があります。

  • 採用
  • 配置・異動
  • 評価
  • 育成・研修・能力開発
  • 組織開発
  • 労務・福利厚生
  • 給与計算
  • 人事テック
  • 海外人事

どの役割を担うかで、仕事内容も大きく変わってきます。また、最近では一部アウトソーシングしている役割も出てきているので、企業によって人事が果たす役割の幅はそれぞれです。

人事はどちらかと言えば経営より

人事は企業の最も重要なリソースである「人材」を管理する部門です。企業は事業を成長させたいので、それを担える「人材」を確保する必要があります。

自社内で「人材」を育成する場合もありますし、「人材」の育成に時間がかかるようであれば労働市場から採用してくることもあります。

採用も新入社員に限らず中途社員を対象とする場合もありますし、いきなり役員を採用することもあります。雇用形態も様々でしょう。

さらに、企業の合併などがあった場合は、違う企業文化で育ってきた「人材」を同じ基準で評価・活用しなければならなくなります。

また、企業が海外進出を狙うとすれば労働市場は日本に限りません。海外の現地法人で人事を任せられる「人材」を確保することもまた人事の役割でしょう。



そして、その根底にある考え方は冒頭に記載した事業を成長させられる「人材」の確保になります。

年功序列・終身雇用が崩壊した今の日本において、企業が競争社会で勝ち抜くためにはすべての分野で時間をかけて「人材」を育てている余裕はありません。

自社の従業員を育てて新しい事業領域を開拓するのがよいか?新しい事業領域の経験者を採用したほうがよいのか?

それはどれくらいのスピード感をもって事業を成長させたいか?によるでしょう。

おそらく早く新しい事業領域を育てたいと思うケースの方が多いかもしれません。

一方で、自社の幹部候補は時間をかけてでも生抜きの「人材」を育てようとするケースも多いです。企業独自能力をもった人材の方が他部門を巻き込んで仕事を進めることができます。理にかなった部分もあるのではないでしょうか。

採用計画も人事だけで決めるものでもなく、各部門長や役員も含めて決められるケースが多いのではないかと思います。どの部門も人手が足りないという実情はわかっていながらも、無尽蔵に採用費があるわけでもありません。事業収益に見合った適正な人件費になるように計画していなかなければなりません。

一昔前は、新卒を一括採用してジョブローテーションを経て「人材」を育てるという感じでよかったかもしれませんが、今は「人材」の育成に対する考え方も異なると思います。

繰り返しになりますが、事業を成長させられる「人材」の確保が根底にありますので、人事はどちらかと言えば経営よりだと思いますし、今後もますますその傾向は強くなっていくと思います。

人事のデータ利活用は他部門よりずいぶん遅れている

アニメ・ドラゴンボールに登場するサイヤ人が利用する「スカウター」のようにすぐに戦闘力が数値化できればいいのでしょうが、そうはいきません。やる気のある人・ない人、仕事ができる人・できない人など、それらを瞬時に見分ける術などありません。だから、従業員に関する情報はすぐに閲覧できる仕組みがほしいところです。

ところが、人事でのデータ利活用は遅れています。その原因の一つは人事データの持ち方はイベント区分になりがちなことがあげられます。

前述の通り、人事部の業務は多岐に渡ります。そうすると、それぞれの担当者はそれぞれの担当区分でデータをまとめて保存することになります。

例えば、次のようなことが発生します。

  • 採用担当者は、採用が終わった後に履歴書を紙で所定の引き出しに保管。
  • 育成・研修担当者は研修受講者のリストを作って、提出物を集め、研修後アンケートを取ったらそのまま所定のファイルサーバーに保存。
  • 評価担当者は被評価者のリストと評価結果をまとめて利用。評価シートそれ自体はそのまま所定のファイルサーバーに保存。

総じて次の担当者が見返すことを目的とした情報の保管であり、それらの情報を組み合わせて「人材」の適材適所に活かそうとする発想には欠けています。

従業員に紐づいてデータが蓄積されていませんし、定性データを活かそうとする仕組みもありません。

さすがに給与計算に関する情報は従業員に紐づいて時系列で蓄積されていますが、定性的な情報は分断されて保存されているケースが多いように思います。

正直なところ、人材配置の適材適所なんて夢のまた夢という所感です。

従業員数が100人程度ならば、ベテラン人事部員の頭の中で記憶できるでしょうが、数千人、数万人になったらもう非現実的です。企業の統合などが起きれば、ベテラン人事部員でも統合相手の従業員のことなどわからないでしょう。

そのようなことが、ここ数年前まで起きてた企業は案外多いのではないかと推測します。

それで、これはマズい!ということになって、タレントマネジメントシステムという従業員の情報を一元管理する仕組みも近年導入されるようになってきています。

さらに、人事のデータ利活用を推進しよう!と人事テックというコトバも飛び交うようになりました。つまり、人事データを人事戦略に有効活用しましょう!という気運が起きています。

断片的なデータだけで人は判断できません。だからと言って、従業員の定性データを蓄積・利活用する努力を怠っていいということにはなりません。

ただでさえ難しい「人材」を管理するのであれば、直観と客観の両方をあわせもつ必要があります。

データの蓄積・利活用という観点では、人事は他部門のずいぶん後ろを走っています。

人事というキャリアを極めようとするまっすぐな人たちが多い

人事には真面目な人がとにかく多いです。

しかも、身なりはきっちりしていて礼節を重んじます。言葉遣いも美しく、綺麗な日本語を話します。

会社を代表して採用の最前線に立つことも多いので、言語能力が発達するのは必然かもしれません。



そして、傾向として人事としてのキャリアを極めようとするまっすぐな人が多いです。

企業を愛し夜遅くまでハードワークをして、責任感をもって仕事に取り組む方が多いのも特徴です。

従業員の鏡なのかもしれません。

経営層からの無茶振りにも文句を言わず、お題に打ち返しを続けているのですから忍耐力も強いです。

人事のプロを目指して、日夜仕事に励む人が多いです。

人事の資料はコトバ遊びになりがち

人事にはやっかいな特徴が1つあります。それは、言語能力がたけているだけに資料が「コトバ遊び」になりがちなことです。

人事の作るパワーポイント資料は数値的根拠に乏しく、美しいコトバがただ並んでいる傾向があります。

直近の社会情勢とか、これからの労働環境とか、ググればすぐに出てきそうなもっともらしいコトバを並べ立てて人事戦略を語ろうとする傾向が強いため、資料を読んでいると頭の中が「?」となることが本当に多いです。

この辺りは、前述のデータ蓄積・利活用が進んでいないことも要因として考えられます。コトバ遊びで誤魔化す傾向がありますので要注意です。

生産年齢人口の減少を背景とした働き方改革によって、働き方のルールが大きく変わりました。そして、今後も変わっていくでしょう。人事として果たすべき役割は今後益々重要になってくるでしょう。

働き方の変化についてまとめた記事はこちら。

対応すべきことが多すぎるので優先付が必要です。そして、今後は対応した取り組みが正解であったかどうかが問われるようになってくるはずです。美しいコトバの乱立ではなく数値的根拠を示す必要がこれまで以上に出てくるでしょう。

まとめ

経営の意図を汲み取った攻めと従業員の働き甲斐を配慮する守りを両立させながら、働き方改革に柔軟に対応していかなければないキャリアです。

人事テックとまではいかないまでも数値的根拠からPDCAを回すような努力もより一層必要になってきます。

経営戦略に基づいて人事制度を変革していくわけですが、人事の醍醐味は制度変更で企業を大きく変革できるダイナミズムにあると思います。制度一つ変えるだけで、企業を変革できる部門は他にそうないでしょう。

人事に5年間在籍しましたが、幅も奥行きもあってやりがいのあるキャリアだと思います。しかも、人事の役割や業務それ自体が近年大きく変わってきています。

人事が行う変革が企業の変革へとつながると思う七味おやじでした。

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